友雅は先ほどから手にした杯を口に運ぶでもなく、どこか思いつめた表情で虚空を見ていた。
こんな姿は珍しい。
「酒は楽しく飲むものだよ」といつも言っている友雅なのに。
「どうかしたのか?」泰明は友雅の顔を覗き込むようにして問うた。
「何か気がかりでもあるのか?」
「ああ」友雅はやっと笑った。「すまないね。心配させてしまったかな」
「友雅が謝らなくても良い。それよりも問題があるのなら私に話して欲しい」泰明は友雅の瞳を見つめたまま言った。
友雅は傍らの泰明を見返した。いつもと変わらぬ清冽な気をまとう泰明。しかし決して冷たくは無い労りのこもった眼差しが自分に向けられている。
友雅は杯を置くと泰明を引き寄せた。
「友雅?」友雅の腕の中で泰明は尚も心配そうに問いかけた。
「何と言ったら良いのだろう・・・。君はここに居るのに・・・何が不安なのだろう」
「不安?」
「そうなのだよ・・・。何か良くない事が起こるような、胸騒ぎがしてたまらないのだよ」友雅の様子は確かに苦しそうだった。
泰明はそっと友雅の背に手を回した。目を閉じて友雅の気を探る。
「・・・・・・」しばらくして泰明は顔を上げた。
「心配はいらぬ。友雅にとって何も悪い事は起こらぬ」淡々と告げる泰明に友雅は微笑んだ。
「そうだね。ありがとう。君がそう言ってくれれば本当に安心できるよ」
泰明の言葉を神託のように信じ安心して寝入った友雅の傍らで、泰明はフッと息をついた。
(私は友雅を騙したのだろうか・・・。しかし・・これは友雅にとって悪い事ではないのだ・・。たとえ友雅がどう思おうとも)
泰明は友雅に寄り添うとそっと目を閉じた。
そう、友雅のヤな予感は半分は当たっていたのですよ。
なにしろ、明日ついに「友さん丸洗い」をすることに決まったのだから。
今回はやっくんは傍観者。
さあ!明日!友さんと我々の運命やいかに!