泰明お誕生日おめでとう!
今年もこうしてお祝いできて幸せです。
お祝いにSSを書いてみました~。ラブラブで~す。(でも微妙にねこまんが引きずっていたりして)
展示にはイラスト2点アップしました。
本当にトモヤスキーになって良かった、泰明にはまって良かったと思っています。
トモヤスは不滅です!
「おっと」
秋草に足をとられ友雅は転びそうになった体勢を立て直した。
走る事などめったになく、ましてや履いている浅沓は塗ってある漆のせいで滑りやすく、形も走るのには不向きだ。
「友雅!」
泰明が友雅に気が付くと駆け戻って来た。
泰明はいつもすっきりとした狩衣姿で動きも軽い。今も随分前を走っていたのだが、友雅の元に駆け寄るのも速かった。
「友雅、大丈夫か?足を痛めやしなかったか?」
息も乱さず友雅を気遣う目は真剣だ。
「大丈夫だよ」
そう言うと友雅は手を伸ばして泰明を抱き込んだ。
「ふふっつかまえた」
「えっ」
急に抱きしめられて、友雅の腕の中でもがいていた泰明は友雅の顔を見た。
「今のは無しだ」
「でもこうして君をつかまえたよ」
心底楽しそうに友雅は泰明を抱く腕に力を込めた。
「つかまえたから君は私のものだね」
泰明の白い首筋に唇を寄せながらささやくと、見る間に赤くなってゆく。
「そのようなこと言っていない!」
むきになって友雅の腕から逃れようとする細い身体が若鮎のようだと友雅は思った。
そして泰明を抱え込んだまま、野に倒れこむ。もちろん泰明が地面に身体を打ち付けたりしないように気を配りながら。
「友雅っ」
尚も抗議しようとする泰明の唇の端に軽く口付けると、びっくりしたように抵抗が止んでしまった。
そんな泰明を友雅は微笑んで見つめた。
「見てごらん。空が高いよ」
草原に寝転んだまま友雅は上空を指差す。
綺麗な青空だった。
その澄んだ青空に向かって尾花や女郎花、吾亦紅などが伸びやかに茂っている。
低い位置には可憐な薄紫の野菊も見えた。撫子の花も。
草原を吹き渡ってくる風は、泰明のほてった頬をやさしく冷やしてくれた。
「いい季節になったね。こうしているととても気持ちが良い」
「そうだな」
青空を見つめながら泰明は小さく答えた。
おそらく泰明はこうして草の上に寝そべって空を見上げるなどと言う事は、今まで一度もしたことがないのだろう。
そう思った友雅もまた平民の童のような事をしたのは初めてだった。
「君といると色々な新しい発見が出来そうだよ」
友雅の言葉に泰明は横を向いて、その顔を見た。
「君と何時までも一緒にいて、こうして笑っていたいね」
「私も友雅とずっと一緒にいたい」
言葉は自然に出た。泰明を見つめる友雅の目がとても優しかったから。
そんな泰明を見て友雅は心から幸せそうに笑った。
「泰明、今日・・長月十四日は君がこの世に生を受けた日なんだってね」
友雅は泰明の瞳を見つめながら、その細い指に自分の指を絡ませた。
「おめでとう。君が誕生したこの日は、私にとって特別な日だよ」
泰明 生まれてきてくれてありがとう
秋の涼やかな風の中、千草に混じってひときわ鮮やかに桔梗の花が揺れていた。