2006・8・22ブログ開設
漫画の続きの準備をしようか、トップ絵を替えようか、ねこまんがでも描こうかと色々引っ張り出してみたんだけど、どれも上手くいかなかったので、あろうことか頼久→泰明風味なボツネタのネームを書き出してみました。
羽化四の39ページからのシーンになるはずでしたが、やはり頼久登場は唐突だったので天狗とお話になってしまったところです。
このサイトで頼久→泰明を書いてもあんまり喜ばれないだろうな~と思いましたが、興味のある方はどうぞv
+ + + + + + + + + +
「泰明殿!?」
名を呼ばれて振り返るととこには頼久が立っていた。
「お久しぶりです」
「そうだな」
短く返事をすると、頼久は眩しそうに泰明を見ていた。
「・・・?何だ?」
訝しげな泰明に頼久は少しばつの悪そうな顔をしながらも微笑んだ。
「すみません。実は鷹通殿に言われたんです。泰明殿に会ったらびっくりしますよ、と」
「咒の事か」
そういえば、あの鬼との最後の戦い以来頼久には会っていなかった。あの後泰明はずっと邸に閉じこもったままだったのだから仕方ないが。
会ったのは友雅と鷹通だけだったのだと、今更ながら思った。
「はい。でも、雰囲気も変わられたようですね」
「? そうか?」
(どこがだ?)とは泰明は問わない。
だから頼久はあらぬ事を口走って、ボロを出さずに済んだ事を感謝した。
「・・・友雅殿の事、聞きました」
「鷹通にか」
「はい。左大臣様のところへいらした時に」
「・・・・」
「友雅殿は泰明殿とも親しくしていたし、陰陽師と言う立場上何とかなるかと思い様子を見て欲しいとお願いをしたが、悪い事をしてしまったと鷹通殿は仰っていました」
「その様に言う必要はない。友雅の事で何も出来なかったのは、私に力が無かったせいだ」
「友雅殿は病です。泰明殿の術ではどうにもならないでしょう?」
「その前に・・・事故に遭う前に嫌な予感はあったのだ。それなのに、事故を防げなかった」
「事故を予見していたのですか?」
陰陽師とはそのような事まで分かるのか、と頼久は驚いた。
「はっきりと分かるわけではない。ただ、何か良くない事が起きそうな気がした。だから旅の無事を祈ったのだが力が及ばなかった」
「では友雅殿のお命が助かったのは、泰明殿のお力のお陰なのですね」
「・・・・?」
「お陰」と言われても事故は防げなかったではないか。泰明は頼久を見ながらそう思ったのだが、
「友雅殿が事故に遭われた場所はとても険しい難所で、そこから落ちて小さな怪我で済んだのは奇跡だと鷹通殿は仰っていました。それは泰明殿の咒のお陰なのではありませんか?」
頼久の言葉に泰明は目を見開く。
(そうだろうか?)
(そうだとしたら、私は少しは役に立ったのだろうか)
「泰明殿が友雅殿のお命をお救いしたのですよ」
泰明の心に届くように、頼久はもう一度繰り返した。
「ですから、あまり思いつめないで下さい」
「そんな風に見えるか?」
「・・・はい」
頼久は短く答えたが心の中で(とても辛そうですよ)と付け加えた。
そして、一年前八葉として共に戦った泰明とはなんと言う違いかと驚いていた。
かつて泰明の咒を醜いと言う者もいたが、頼久はそんな咒など気になったことなど無かった。
それどころか、咒の下の怜悧な美貌に崇拝にも似た想いを抱いていたのだ。
そして何より、迷いの無い明確な言動こそが泰明の存在を際立たせていたのではないのか。
それが、今、目の前にいる泰明は冷たさや強さよりも儚さを感じる。
背筋はいつものようにまっすぐに伸びているものの、目は伏目がちだった。
頼久は長い影を落とす睫に常に無く心が騒ぐのを感じた。
かなり長い間頼久は泰明を見つめていたのだろうか。
「頼久?」、といぶかしむ泰明の声に頼久は我に返った。
そして動揺を隠すように「帰りませんか?」と泰明を促した。
秋の夕暮れは早い。西の空には、宵の明星がぽつんと出ていた。
名を呼ばれて振り返るととこには頼久が立っていた。
「お久しぶりです」
「そうだな」
短く返事をすると、頼久は眩しそうに泰明を見ていた。
「・・・?何だ?」
訝しげな泰明に頼久は少しばつの悪そうな顔をしながらも微笑んだ。
「すみません。実は鷹通殿に言われたんです。泰明殿に会ったらびっくりしますよ、と」
「咒の事か」
そういえば、あの鬼との最後の戦い以来頼久には会っていなかった。あの後泰明はずっと邸に閉じこもったままだったのだから仕方ないが。
会ったのは友雅と鷹通だけだったのだと、今更ながら思った。
「はい。でも、雰囲気も変わられたようですね」
「? そうか?」
(どこがだ?)とは泰明は問わない。
だから頼久はあらぬ事を口走って、ボロを出さずに済んだ事を感謝した。
「・・・友雅殿の事、聞きました」
「鷹通にか」
「はい。左大臣様のところへいらした時に」
「・・・・」
「友雅殿は泰明殿とも親しくしていたし、陰陽師と言う立場上何とかなるかと思い様子を見て欲しいとお願いをしたが、悪い事をしてしまったと鷹通殿は仰っていました」
「その様に言う必要はない。友雅の事で何も出来なかったのは、私に力が無かったせいだ」
「友雅殿は病です。泰明殿の術ではどうにもならないでしょう?」
「その前に・・・事故に遭う前に嫌な予感はあったのだ。それなのに、事故を防げなかった」
「事故を予見していたのですか?」
陰陽師とはそのような事まで分かるのか、と頼久は驚いた。
「はっきりと分かるわけではない。ただ、何か良くない事が起きそうな気がした。だから旅の無事を祈ったのだが力が及ばなかった」
「では友雅殿のお命が助かったのは、泰明殿のお力のお陰なのですね」
「・・・・?」
「お陰」と言われても事故は防げなかったではないか。泰明は頼久を見ながらそう思ったのだが、
「友雅殿が事故に遭われた場所はとても険しい難所で、そこから落ちて小さな怪我で済んだのは奇跡だと鷹通殿は仰っていました。それは泰明殿の咒のお陰なのではありませんか?」
頼久の言葉に泰明は目を見開く。
(そうだろうか?)
(そうだとしたら、私は少しは役に立ったのだろうか)
「泰明殿が友雅殿のお命をお救いしたのですよ」
泰明の心に届くように、頼久はもう一度繰り返した。
「ですから、あまり思いつめないで下さい」
「そんな風に見えるか?」
「・・・はい」
頼久は短く答えたが心の中で(とても辛そうですよ)と付け加えた。
そして、一年前八葉として共に戦った泰明とはなんと言う違いかと驚いていた。
かつて泰明の咒を醜いと言う者もいたが、頼久はそんな咒など気になったことなど無かった。
それどころか、咒の下の怜悧な美貌に崇拝にも似た想いを抱いていたのだ。
そして何より、迷いの無い明確な言動こそが泰明の存在を際立たせていたのではないのか。
それが、今、目の前にいる泰明は冷たさや強さよりも儚さを感じる。
背筋はいつものようにまっすぐに伸びているものの、目は伏目がちだった。
頼久は長い影を落とす睫に常に無く心が騒ぐのを感じた。
かなり長い間頼久は泰明を見つめていたのだろうか。
「頼久?」、といぶかしむ泰明の声に頼久は我に返った。
そして動揺を隠すように「帰りませんか?」と泰明を促した。
秋の夕暮れは早い。西の空には、宵の明星がぽつんと出ていた。
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